最近、NHKで再放送されている「Shrink~精神科医ヨワイ~」を観ました。元々、漫画(原作:七海仁、漫画:月子)が原作のドラマで、具体的なメンタル疾患をテーマにした番組。私が、たまたま観たのは、全3回のうちの第2回「双極性」でした。
私も、人事部門を担当してから、メンタル疾患になられた多くの方を見てきたのですが、なかでも、この「双極性」障害は治療法が難しく、私が会った数名の方も、最終的には職場復帰することなく、休職期間満了で退職されたのでした。「うつ病」は、抗うつ剤を服用することで、何とか症状を安定させることができるのですが、この「双極性」障害は服用のバランスが難しいのが特徴です。うつ状態のときに、抗うつ剤を服用していると、やがて「そう状態」がやってきて、「抗うつ剤」が逆に「そう状態」を助長してしまい、その波が大きくなればなるほど、患者はより苦しむことになります。特に、そう状態がひどくなると、お金を散財したり、他人に攻撃的になったりして、周囲の信頼を失いかねないので、やっかいです。
特に、うつ状態からそう状態に転換する途中では、ご自身も、また他者からみても、しごく普通に見えるので、「治ったのではないか」と錯覚してしまうことがあり、完治するには、相応の時間が必要なのです。
私が出会った数名の方は、本当に良いひとたちで、ある部分、優しすぎるひとたちだったように思います。なので、「伴走」する側としては、何とか治ってほしい、と願うのですが、結局、一進一退を繰り返し、時間だけが過ぎていくことになります。
うつ病もそうなのですが、遺伝要因とはいわれるものの、実は、その原因はわかっていません。
ただ、私の経験上、ひとつだけ共通して言えるのは、その方々が、発症前に、相当のストレスを抱えていた時期があった、ということ。真面目過ぎて、そして優しすぎるがゆえに、ストレスをひとりで抱えてしまった結果、発症してしまった、という印象が強かったように思います。もしタイムマシーンがあって、そのストレスを抱えるピークの前にお会いしていたら、「そんなに頑張らなくていいですよ」と声掛けできたろうに、そうすれば、こんなに苦しむこともなかったのでは?と思うと、残念でなりませんでした。
今、私がカウンセリングの仕事を始めて思うのは、どうしようもなくなってからお会いするのではなく、その前兆が現れる、もっと早い時期にお会いして、極度の緊張に向かう心が手の届かないところにいくまえに、少しでもほぐせるのではないか、ということです。「双極性障害」に悩んでいた方々の、「普通の状態」にあるときの、涼やかな笑顔を思い出すたびに、そう思うのでした。
ドラマおよび漫画では、最後、主人公の方が治療に前向きになっていくハッピーエンドで終わるのですが、現実はそうならないことも多く、こういうドラマが、あるいは漫画が、もっとたくさんの人の知るところとなって、自ら「予防」できる世の中になれば、と願います。