直感で決めた就職、運命のような転職(前編)

さて、ここで、ちょっと自伝的叙述をひとつ。

今から、43年半前、1982年の晩夏の夕暮れ。
私は、大学の学生控室で、同期の一人と、まったり珈琲を飲みながら、
「そろそろ就職活動しないとね~」と話していました。


そして、たまたま、そこに置いてあった「ダイヤモンド就職ガイド」を手に取って、

気の良い、いつも、ニコニコ笑っている彼に言いました。

「パッと開いて、左側のページの会社は俺、右側のページは君、として、就職活動を始めない?」

彼は一瞬、エッという表情で、でも、やはりいつもの、にこやかな笑顔に戻り、

「おもしろいね~。そうしてみる?」と賛同してくれたのでした。

 

当時は、10月1日が就職活動解禁日で、学生はだいたい夏前から動く、という、のんびりした時代。

今のように就職を決めるための情報も少なく(会社情報の冊子があるくらい)、全くの手探りで就職活動をしていた頃でした。

 

「じゃあ、行くよ~」と、その分厚い本をパッと開いたら、

左側には、当時のアパレルの雄であったレナウン、右側は、大手電機会社のN電気がありました。

私たちは、それぞれの連絡先に電話することを確認して、ぶらっと別れたのでした(当時は、携帯もなかったので自宅に戻って)。

そして・・・半年後、。それぞれの就職先は、その開いたページにあった左側と右側の会社。

もちろん、私も他の会社は面接を受けましたが、運命に引っ張られるように、あッという間に、レナウンに入社。

なんとも不思議な縁というか、偶然というか・・・・

今、さまざまな情報を入手し、面接対策を練り、親にも相談し、希望の会社に入るために、あらゆる努力をする若者からしたら、

まるで冗談のような、漫画のような話ですが・・・これは実話です。

 

たまたま、「京の着倒れ」を地でいくようなファッション好きの母親が、私のために買ってくれた洒落たブルゾン(ジャケット)がレナウンのブランドで、そのページを見たときに、「あ~あの会社か」くらいの感覚でしたが、それも何かの縁だったのかもしれません。

 

一時は、世界で最大の売上を誇ったレナウンは、90年代のバブル崩壊とともに、凋落の一途をたどり、

私が2003年に辞めた後も、長らく延命していましたが、2020年のコロナ禍の中で、あえなく清算したのは、知る人ぞ知るお話です。

 

しかし、私がレナウン在職中の19年と19カ月で得た経験は、何物にもかえられない貴重なものでした。

何より、レナウンに入らなければ、先に入社していた嫁さんと出会うこともなく、今の家庭も存在しません。

 

そういう意味では、西日の差す部屋で、あのページを開いたあのゴットハンドこそが、運命の必然だったように思います。

(後編:運命のような転職、に続く)