人生最大の危機を救ってくれたカウンセラー

今から20数年ほど前の、昔々のお話です。

 

当時、40代前半のJ氏は、初めての転職をしたばかりで、仕事の内容は前職と同じでも、新たな環境で、思い悩んでいました。その悩みの原因は、当たりの強い部下との関係。

 

日本でも、職場での権力や地位を利用したいじめや嫌がらせを指す「パワーハラスメント(パワハラ)」という言葉が認識されはじめた頃。ただ、当時はセクハラほどは一般的には知られておらず、今では、部下から上司への「いじめ」もパワハラの一部として認識されていますが、ましてや部下から上司に対して、というケースはレアケース。

 

J氏は、業務上外せない部下からの執拗な「当たり」に、なんと2年半も耐え続けていたとのこと。元々、ストレス耐性には自信があったJ氏も、会社に行くのがおっくうになったり、夜、寝汗をびっしょりかいたり、原因不明の蕁麻疹が出たり、結構、メンタル的にもぎりぎりの状態だったようです。

 

そんなとき、社内にカウンセラーがいることを知り、1か月に1度、1時間ほど、話を聞いてもらうことにしました。その男性のカウンセラーは、終始、J氏の話に真剣に耳を傾け、頷き、あいずちをうち、時々、「それは大変でしたね」「つらかったでしょう」という、ねぎらいと共感の言葉をつないでくれました。何か具体的な助言をしてくれるわけではないのですが、終始、否定せず、寄り添ってくれるその姿に、J氏は、都度、勇気を取り戻し、その2年半の苦闘を乗り越えたのです。

 

その後、J氏は、その部下とは和解したのですが、今から思い返せば、その時が「人生最大の危機」。その危機を乗り切ったことで、その後、苦しいことやつらいことがあっても、「あの時に比べれば、なんてことはない」と自分の状態を客観的に見ることができ、振り返ってみれば、戦いを乗り切った自信が、今のJ氏のパーソナリティの重要なコア=強さ、になっているようです。

 

どんなにストレス耐性が強くても、人は大きなストレスに、ひとりでは対処できません。過去、ストレス耐性が強いと思われた人が、意外ともろく壊れていく姿を、私も少なからず見てきました。「自分は大丈夫」と思わず、苦しいときは誰かに頼り、誰かに話を聞いてもらうことで、たいていのことは乗り切れます。

 

人はひとりでは生きられないー

言い古された言葉ではありますが、今、こうしてカウンセラーの仕事をしているからこそ、身に染みて信じることができる言葉でもあります。